2つの県にそれぞれ病院を有する医療法人。1病院は地方に位置し、1病院は都心部に位置しており、職員の賃金水準が地方の病院に合った賃金水準になっていました。当然、都心部の病院では、近隣病院に比べて賃金水準は低く採用に苦戦していました。賃金水準を上げるためにその原資を確保する増収施策はあるのか、どのように賃金制度を見直すことが妥当なのか検証して欲しいというご相談がありました。現在の賃金制度から見えた課題まず、どのように賃金制度を見直すことが妥当か検証するために、賃金分析を実施しました。現在の賃金制度を確認した結果、以下のような課題が明らかになりました。すべての職種の賃金が近隣相場を下回っており、ほとんどの職種の賃金が統計値の下位25%に位置していたこと。年齢に依存した賃金設計になっており、若くして役職となっている職員よりも年齢の高い一般職のほうが基本給が高く、逆転現象が多数発生していたこと。30代後半までは緩やかに昇給による格差が見られるが、40代以降は基本給が横ばい傾向になっていたこと。上記の課題とともに、仮に全職種の賃金水準を統計値水準まで引き上げた場合、約1億円/年の追加人件費が必要となることが明らかになりました。賃金水準を引き上げるための原資を確保する増収施策の提案賃金水準引き上げの原資を確保するため、様々な増収施策を検討しました。短期的に取り組みが可能な増収施策、中長期的に取り組みが必要な増収施策に分けて提案を行いました。短期的に取り組みが可能な増収施策①診療報酬算定の強化各部門と医事課の連携不足による取り漏れの確認、診療報酬に対する知識不足による取り漏れの確認、人員配置見直しによる新規施設基準の届出により診療報酬算定を強化。②職員の生産性向上診療報酬の単純な取り漏れではなく、精神科作業療法を中心とした各職種の生産性に直結する診療報酬の算定強化。精神科作業療法のプログラム見直し、服薬指導等の算定方法の見直し。③人件費以外の費用項目の見直し費用項目の中で人件費を除く、材料費、委託費、保守管理費等を見直し。弊社が保有するベンチマークデータとの比較分析だけでなく、契約書、仕様書から見直しを実施。中長期的に取り組みが必要な増収施策①病棟機能再編・精神科急性期治療病棟の強化・精神療養病棟から専門病棟への転換各増収施策を積み上げることにより、賃金引上げに必要な追加人件費1億円/年を捻出することができました。新たな賃金制度の設計賃金水準の引き上げのための増収施策の立案を踏まえて、新たな賃金制度の設計を行いました。賃金制度設計は、下図のようなステップで進めていきました。収益改善策と新たな賃金制度の決定ご支援の中で、賃金引上げに繋がる収益改善策の立案、新たな賃金制度の設計を完了させ、残りは実行に移していくところまで整理することができました。