県内に2病院とグループホームを有する医療法人。1病院は病床数300床の急性期系病院、もう1病院は病床数200床の慢性期系病院。慢性期系病院では、若い世代の人材確保に苦労していました。既存職員の高齢化もあり、新たに職員を採用したいという思いがあったのですが、採用が難しい地域でもありました。新たに職員を採用していくことができればベストですが、まずは限られた職員の中で、安定的に運営できる体制を構築することを模索していました。病棟構成の提案病院内で起きている課題に対する解決策を立案するために、まずは、2ヵ月間の現状分析を実施しました。現状分析では、職員の確保が困難な状況を踏まえて、最も人員を要する病棟の再編案の策定を優先的に検討しました。データ分析、現場ヒアリングを通じて、5つのパターンを提案しました。プラン名プラン詳細ポイント①精神療養病棟の充実精神一般病棟を精神療養病棟に転換し、看護配置及び夜間配置の緩和を検討。精神療養病棟に対する政策動向も考慮した上で、患者層調査を実施。「重度かつ慢性」の基準に満たす患者を精神療養病棟に集約。②専門特化病棟の検討➀(認知症治療病棟)患者調査を行い、対象患者の集約が可能な場合は、精神一般病棟を認知症治療病棟に転換を検討。単純な精神療養病棟への転換ではなく、病棟構成の見直しに併せて看護配置の緩和を実施。③専門特化病棟の検討②(特殊疾患病棟)患者調査を行い、対象患者の集約が可能な場合は、精神一般病棟を特殊疾患病棟に転換を検討。特殊疾患病棟への転換は大幅な増収が期待できるため、介護度の高い患者に対応した自動ベッドなどの設備投資も併せて検討。④1病棟ダウンサイジング&訪問看護ステーション立ち上げ看護配置の早急な緩和を図るために病棟閉鎖を検討。一時的に発生する余力人員を他事業に異動。看護配置の緩和は可能な一方で、一時的に配置過剰になるため、訪問看護ステーションの立ち上げも同時に検討。⑤1病棟ダウンサイジング看護配置の早急な緩和を図るために病棟閉鎖を検討。一旦は、一時的な看護配置の緩和を図る。後に、プラン1~プラン4への転換を検討するプランとした。経営幹部、現場職員と議論を重ねた結果、➀病棟再編をしても増収・増益が見込めること、②現在よりも効率的かつ基準上余力が出る看護配置になること、③今後の働き手の減少を見込むこと、の3点を踏まえてパターン④「1病棟ダウンサイジング&訪問看護ステーション立ち上げ」を選択をすることにしました。現場ヒアリングから見えてきたこと現状分析では、データ分析だけではなく、各部門の管理職以上には現場ヒアリングを実施します。現場ヒアリングでは、現在の業務内容、現場で起きている課題、職員の経営に対する意識など、データでは見えない部分を確認します。当院においても、各部門の管理職以上に現状ヒアリングを実施しました。現場ヒアリングを通じて、各部門(職員)が目の前の業務に一生懸命に取り組んでいることが伝わる一方で、部門別の行動目標や評価指標が無く、各部門の取り組みが病院全体で共有・連携ができていない状態でした。部門別アクションプランの策定と新たな会議体の立ち上げ部門別アクションプランを策定し、アクションプランの進捗管理ができるよう部門長クラスを集めた会議体を立ち上げ、各部門の取り組みを共有するようにしました。その会議では、3つの目的を掲げました。各部門の取り組みを定量的・定性的に評価できる仕組みをつくること各部門の行動方針と日々の取り組み内容を共有する場をつくること部門単体では解決できない問題を部門横断的に解決する組織風土をつくることまた、新たに立ち上げたこの部門長クラスの会議体が、病院経営においてどのような役割を担い、他の会議体とどのような関係性になっているのかを以下のようなイメージで整理しました。新たに立ち上げた部門長会議を経営管理会議の下に置き、院内の業務改善課題を中心に部門単体では解決できない課題も取り上げながら院内連携を図っていきました。管理職の経営参画による経営に対する意識の向上各部門が取り組むべき目標を設定し、部門長を中心とした会議体を立ち上げることで、部門長が経営に参画する機会が増え、現場職員の経営に対する意識が向上しました。